Markdown紹介

Markdownとは

Markdownとは、マークアップ言語の一つです。マークアップ言語とは、HTMLで <html>このように</html> タグを使ってテキストを機械が処理する時に参照するマークのことです。Markdownは、そうしたマークアップに比べてさらに簡単にマークアップできるので、「軽量マークアップ言語」と呼ばれています。先ほどHTMLの例を出しましたが、MarkdownはHTMLに簡単に変換することができ、HTMLは多くのフォーマットに変換可能なので、Markdownは多くのフォーマットに対応できるといっていいでしょう。

最近では、統計解析で頻繁に用いられているプログラミング言語Rと組み合わせたR MarkdownやPythonユーザに人気のインターフェイスJupyter NotebookでもMarkdownを使って文章を記述することで、プログラミングの実行とその説明文を簡単に文書化することができます。

ちなみに、いまみなさんが読んでいるこの文章もMarkdownで書かれています。もちろん、Alphabetでも、記号つきのアルファベット(î/ì/ï)やثانيةといったように多言語に対応しています。

Markdownのメリットとデメリット

Markdownのメリットは学習コストが低く、さらにWordのようにWYSIWYGのアプリケーションを用いる必要もないので、長い文章を書く際にアプリケーションが重くなって執筆時にイライラが募ることもありません。

Markdownを用いた文書は、様々なファイルに変換するツールが開発されています。後述しますが、例えばPandocというツールを用いるとMarkdownからWordのファイルに変換することができます。Pandocについては、「多様なフォーマットに対応!ドキュメント変換ツールPandocを知ろう」を読むとすぐにでも活用できます。

デメリットとしては、論文を作成するまでMarkdownを使うとなると、少し覚えることが増えます。例えば、別の文書のフォーマットに出力する際には提出する文書に合わせてレイアウトを設定する必要があります。

レイアウトに関連すると、Markdownは多様な表現ができません。具体的には、圏点・下線・脚注を表現するための統一された記法は存在しません。これらを表現する場合には変換するツールごとの文法に従う必要があります。なお、縦書きに関してはすでにMou.appというアプリケーションがあります。これを用いることで縦書きでもMarkdownで書くことができます。

現在、文学研究者の1%もMarkdownを知らないので文書の共有の際に結局Markdownではできないでいます。しかし、Markdownに慣れてしまうと、ほんのちょっとしたメモ書きといったあらゆる文章をWordで書くのは奇妙に思えてくるようになります。そもそも、Wordはある会社の作った有償のソフトウェアでしかなく、工夫をするとWordでできることはだいたいWord以外の無償のソフトウェアによって比較的簡単に実現できます。それはまた別の機会に説明することになると思います。

いずれにせよ、この研究会の設立を気に、少しずつでもMarkdownを使った執筆を行う人が増えればいいなと思います。

使い方

使い方はとても簡単です。なお、Markdownで執筆を行う場合は、Markdown専用のアプリケーションをダウンロードするか、vimかemacsといったエディタをダウンロードします。

アプリかエディタの用意はできたでしょうか。それでは、Markdownで書いていきましょう。

Markdownは基本的に4つの記法だけ覚えれば基本的なことができます。それは、改行・見出し・強調・引用の4つです。

改行は、文末に半角2つのスペースか一行空行を挟むことによって表現できます。

見出しは、 # の数によって表現できます。 # が文字が一番大きな見出しで、 #### のように数を増やすと見出しの大きさが小さくなります。なお # のすぐ後ろには半角の空白を1つ入れるようにしましょう。

強調は、 *_*斜体* のように1つ用いると 斜体 になり、**ボールド体** のように2つ用いると ボールド体 になります。日本語のタイポグラフィーのルールでは、ボールド体ではなくてゴシック体を用いるべきですが、その点は組版の段階になってから変更することになると思います。

引用は、> によって表現することができます。引用は灰色の縦線が引かれて灰色の文字のインラインブロックで表現されます。

> 引用しています。

これは、

引用しています。

のように表現されます。なお、 > の行を改行しないと、引用部分に含まれてしまうのでお気をつけください。

さて、以上で、文学研究で執筆する際の基本的な仕様がカバーされたと思います。他にもMarkdownは綺麗にリストや表を表現する方法があります。検索すると記法の紹介がたくさんでてくるので気になった方は調べて見てください。

ところで、Markdownは最初に説明したように、HTMLに変換する前提で設計されています。その一方で変換するエンジンには統一された規格がありません。そのため、圏点・脚注・下線などの表現をする場合に一番確実なのはHTMLの記法を用いることです。ただし、Pandocといったツールを使う場合は表現を簡単にできるので、それも併記しておきます。

まず、圏点を打つ場合を見てみましょう。圏点は﹅や●のことです。近代日本の活版では、◉や◎もよく見ますね。HTMLで表現する場合、CSSの text-emphasis-style で指定する必要があるのですが、単に変換する場合は、ルビを応用するだけでも平気です。 <ruby><rb>圏点</rb><rt>&#xFE45;&#xFE45;</rt></ruby> と表記すると、圏点﹅﹅のように圏点を打つことできます。ただし、Pandocや他の変換ツールを用いて別のフォーマットに変換する際に予期せぬ動作が発生するので、最終的なフォーマットが決まっている(Wordで提出する、など)場合はあらかじめ指示方法を決めておくのをお勧めします。

次に、脚注をふる方法を確認します。確実に脚注を表現するには、少し面倒な記述が必要です。まず、脚注箇所に <a href="#fn1" id="r1"><small><sup>1</sup></small></a>と書きます。実際に打ってみると、この通りです11 は任意の数字で、 #fnr の後ろの桁数は1番目の注釈に1と打って、その後の数字は1ずつ足していきます。ただし、手動での入力は間違いのもとなので、スクリプトを組んで自動化することがベストです。近いうちに自動化するスクリプトを公開できればいいと思います。さて、話を戻します。脚注番号に対応する脚注は、 <p id="fn1"><a href="#r1"><sup>1</sup></a></p> と書いた場合、一つの塊になります。以下の通りです。

1脚注です。

あるいは、 <a href="#r2"><sup>2</sup></a> と表記すると、2 このようにその場に記述できます。なお、Pandocの場合はずっと簡単で、 [^3] と書いて、 [^3]: と任意の場所に置いて、ダブルコロンの後ろに脚注を書くと、自動的に文末脚注におくられます。

下線は上の2つに比べてずっと簡単です。 <u> </u> で下線を引きたい箇所を囲めばいいだけです。下線を引くと、このようになります

最後に

Markdownの紹介は以上です。Markdownを使い慣れると、Wordなどに戻るのは校正やレイアウト段階以外になくなります。Markdownでは300頁ほどの本の分量のファイルを編集しても、もたもたした動作を感じさせることはないからです。また、とくにWordでありがちなのですが、予期せぬ動作もありません。また、人文系の学術出版の編集者にとっても、これは素晴らしいことです。圏点など高度な表現については指示記号を決めておけば、図表などを取り込んでいても、PandocにてICMLファイルに変換することでIndesignで執筆時に意図した通りのレイアウトでインポートできるファイルが作れます。

書くことの技術は様々な形で生まれています。みなさんも、ぜひMarkdownを使って素敵な執筆ライフを送ってください。

最終更新:2019/4/10